住民健康講座

住民健康講座要旨

第212回平成27年6月11日(木)『高齢者のうつ病と認知症』
  • 場所津市久居公民館
    津市久居元町2354
  • 講師津メンタルクリニック
    院長 界外啓行先生
  • 講演要旨1 実はあった?! うつ病と認知症の深い関係

    自分には関係ない、と思われがちな「うつ病」ですが、実は、日本人のおよそ15人に1人がうつ病を経験しています。厚生労働省の患者調査によると、うつ病が、中高年だけではなく、高齢者(とくに女性)にも多い病気であることが示されています。
    しかし、高齢者のうつ病では、しばしば抑うつ気分が目立たず、集中力や判断力が低下して記憶力が衰えたようにみえるため、認知症と間違われることがあります。一方、認知症でも、抑うつ気分、情緒不安定、意欲や自発性の低下、無関心といった症状がしばしば現れるため、うつ病と区別がつきにくいことがあります。ます。また、うつ病と認知症が重なって起こることもあります。
    Ownbyら(2006)は、うつ病があるとアルツハイマー病のリスクが約2倍になることを報告しました。すなわち、うつ病にならないこと、うつ病を早く治すことが、認知症予防にもなると言えるでしょう。

    2 これでわかる!! うつ病と認知症の治療

    うつ病には、からだ、こころ、環境といった要因がかかわっているため、治療は、薬物療法、精神療法、環境調整の3つが大きな柱になります。抗うつ薬は、うつ病患者の脳内にて不足した神経伝達物質を増やす働きがあります。もの忘れなどの原因がうつ病であった場合、うつの治療によって劇的に改善することがあります。なお、認知症は薬を飲んでいても徐々に進行しますが、抗認知症薬には進行をおくらせる効果があります。
    精神療法の一つである認知行動療法では、うつを招きやすい考え方(白黒思考、いつもそうだ、きっとそうだ、~すべき、など)からの脱却を図ることを目標とします。
    環境調整としては、休養、うつを来たしやすい生活習慣の改善(食事、運動。睡眠)、孤立を防ぐための工夫などあり、家族、医療、福祉の連携や役割分担が望まれます。

    3 まとめて予防!! うつ病と認知症

    うつ病と認知症の予防には共通点がたくさんあります。
    <運動> 運動は、認知症の危険因子となりうる心血管疾患やⅡ型糖尿病、肥満など、多くの体の病気の予防になることが示されています。よく運動している人は認知症になりにくいという報告も多数あります。また、うつ病について、Mammenら(2013)は、軽い運動でも予防の効果があると報告しました。おおよそ、週90分~150分、週3日以上、散歩などの運動を行うと良いようです。ただし、無理な気晴らしは本人を疲れさせるため、本人の自発性を尊重して、楽しみながら行うことが大事です。
    <食事> 果物や野菜や魚などが認知症やうつ病の予防になるという報告は多くみられます。Psaltopoulouら(2013)らは、地中海食が脳卒中やうつ病や認知症のリスクを減らすと報告しました。地中海食では、果物や野菜や豆や穀物やオリーブオイルをたくさん摂り、肉類や甘いものを控えることが基本となります。もし、普段の和食をベースにするのであれば、野菜と果物をたっぷり食べ、主食を精製度の低い穀類にするとともに、さらなる減塩に努めるのが良いでしょう。
    <交流> 社会的なつながりのレベルが、認知症やうつ病の発症リスクや予防に関連することが報告されています。町内会活動、高齢者グループ、サークル活動、自治体の催し、スポーツクラブ、ボランティア、デイサービスなど、閉じこもらずに、人と付き合いましょう。
    <趣味> Karpら(2006)は、余暇活動における精神的、身体的、社会的要素が、等しく認知症のリスク軽減に寄与することを報告しました。編み物、読書、ボードゲーム、楽器、ガーデニング、ダンスなど、頭も体も使い、人と交わる趣味をもちましょう。
    <考え方> 気分や行動は、できごとをどうとらえるかによって変わります。うつ病を招きやすい考え方、受け止め方について振り返り、気楽な考え方を身につけていくことが、うつ病だけでなく、ひいては認知症の予防にもなるでしょう。
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