住民健康講座

住民健康講座要旨

第237回平成30年1月11日(木)『それって認知症?~簡単な見分け方と受けるべき検査について~』
  • 場所津市久居ふるさと文学館
    津市久居東鷹跡町2-3
  • 講師津メンタルクリニック
    院長 界外啓行先生
  • 講演要旨1 認知症って何?
    認知症とは、もの忘れ(とくに、最近のことがわからなくなる)、認知能力(理解力や判断力)の低下、性格や気分や行動の変化、などの結果として生活に支障をきたす症候群です。これは通常、脳の病気(脳に異常たんぱく質がたまる、血管がつまって脳細胞が死ぬ、など)によって生じます。2013年の厚生労働科学研究事業報告では、2012年時点で認知症の人は全国に約462万人おり、65歳以上の高齢者のうちおよそ7人に1人が認知症であると推定されています。

    2 老化と認知症のかんたんな見分け方
    「新しいことをおぼえられない」のが、認知症のもの忘れの特徴です。かんたんに言うと「思い出せないのは老化、おぼえられないのは認知症」です(もの忘れ以外から始まる認知症では必ずしも当てはまりませんが)。記憶の<おぼえる><保持する><思い出す>という手順を、買い物で<お金を財布に入れる><落とさずに店まで持って行く><支払いの時に財布からお金を取り出す>という手順に例えてみますと、老化では、お金は財布に入れたし、落とさずに店まで持ってきたのだけれど、財布の口が硬いので、お金は入っているのだけれどがなかなか出てきません(おぼえているがすぐに思い出せない)。しかし、認知症では、財布がちぢんでいるのでお金が入らず、しかも、お店に着くまでに半分落としてしまうので、支払おうにもお金が財布に入っていません(おぼえていないので思い出せない)。これは、脳の中のいったん情報をためておく部分が小さくなっていることによっておこります。
    新しいことをおぼえられないと、最近おこった出来事そのものを思い出せなくなります。ただの老化では、ヒントがあれば思い出せるのに、認知症では、ヒントをもらっても思い出せません(さきほどの例えで言えば、財布にお金が入っていないので)。典型的な例をあげると、老化では、昨日何を食べたか思い出せないことがありますが、認知症では、食べたこと自体を忘れています。老化では、買い物に行って卵を買い忘れることがありますが、認知症では、卵を買ったことを忘れて何度も買ってきます。老化では、鍵をどこに置いたか思い出せないことがありますが、認知症では、自分が置いたことを忘れて人に持って行かれたと言うことがあります。
    また、認知能力(理解力や判断力)が低下すると、計画的に物事を実行し、目的をとげることができなくなりますが、これは、ものの使い方がわからなくなるという症状で気づかれることがあります。例えば、冷蔵庫が食べ物を保管する場所だとわからずその中に靴下や電卓を入れてあったり、ズボンの上から下着をはいていたり、食べものであることがわからずにおかずをかきまぜて遊んでいたり、食べてはいけないものだとわからずに新聞や花を食べてしまったりすることがあります。
    なお、性格や行動の変化から始まるタイプの認知症では、上記のようなもの忘れが目立ちません。老化では、多少性格が際立つことがあっても、人が変わったようになったり今までしなかったことを突然行うようになったりはしないので、もともと温厚だった人が怒りっぽくなったり、真面目だった人が人前でひわいなことを言うようになったり、ほしいものが目に入ったとたんに商品をつかんで走り出したりするようになったら、認知症を強くうたがいましょう。今までなかった幻が見えるようになった場合も認知症の場合があります。
    もちろん、これらの症状がすべて現れるわけではありません。もの忘れが目立つけれども性格は変わらない認知症、性格は変わったけれど記憶力は一見きちんとして見える認知症、などいろいろあります。この違いは、脳のどこが障害されているかによります。しかし、いずれにせよ、ここであげた<出来事そのものを忘れる><ものの使い方がわからなくなる><性格や行動が変わる>といった症状が出てきた場合は、認知症を強くうたがって、早めに病院に相談したほうが良いでしょう。

    3 認知症をうたがった場合に受けるべき検査
    病院では、認知症をうたがった場合、まず、ただの老化か?異常なもの忘れか?を見分けるため、次に、認知症か?認知症に見える別の病気か?(ここでは「治る認知症」と呼びます)を見分けるために、検査を行います。
    「治る認知症」には、からだの異常によるもの(慢性硬膜下血腫、正常圧水頭症、脳腫瘍、ホルモン異常、栄養素の不足、感染症、せん妄など)、こころの異常によるもの(うつ病など)、のみ薬の副作用によるもの、などいろいろなものがあります。
    通常は、基本的な問診や、からだの状態の確認のあと、認知機能を調べる検査を行います。これは、質問に答えたり、指示された動作を行うなどの検査で、5~10分程度で終わります。もの忘れや理解力・判断力の低下のおおまかな質や程度を知ることができます。
    血液検査では、肝臓や腎臓の機能、貧血、血糖、栄養素(ビタミンなど)、感染症の可能性など知ることができ、からだの異常から来る「治る認知症」を見つけるのに役立ちます。
    脳の形を見る検査(形態画像検査)には、X線を使ったCT検査や、電磁気を使ったMRI検査などがあり、頭の内に何かできていないか、脳がちぢんでいないか、などを知ることができます。
    脳の機能を見る検査(機能画像検査)では、脳内の血流のかたよりなどを知ることができます。
    画像検査のように、設備がないとできない検査が必要な場合は、大きな病院を紹介されることがあります。また、こころの病気を見分けるために、精神科を紹介されることがあります。
    このくらい大丈夫、と思っていても実は…ということがありますので、何はともあれ、まずは、普段の様子を知っておられるかかりつけの先生に相談されるのが良いでしょう。ご家族も付き添っていただくと、ご本人の様子がさらによくわかります。
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