子どもの健康

学校保健

2015.07.31第10回学校保健研修会(7月30日開催)講演要旨

第10回学校保健研修会
○開催日時:平成27年7月30日(木) 14:00~15:30
○開催場所:久居一志地区医師会館
○講 演:『性のトラブルを避けるために~思春期からのライフプラン~』
          金丸産婦人科 院長 金丸恵子 先生
○講演要旨:                  
 女性の人生には月経、妊娠、出産そして閉経、と大きな変化があります。心身ともに健康でいきいきと自分らしく人生を生きるためには、あらかじめ知っておくと役に立つことがたくさんあります。                   
 性教育の必要性はHIV感染の報道がなされた1992年以後それまで以上にその重要性が叫ばれてきました。2000年ごろにはクラミジア感染が十代を中心に爆発的な広がりをみせ、同時に十代の人工妊娠中絶件数も急増し、2004年には1994年時の倍数になりました。その後幸い減少に転じています。しかし三重は全国平均よりまだまだ高い水準にあります。性交経験率は学校にもよりますが、中学3年で3-7%、高校3年で40-70%となっています。思春期にその後の人生に後悔を残すトラブルを抱えないことはライフプランの第一歩でしょう。望まない妊娠を避ける知識は望んだ時期に妊娠するための知識でもあります。
 避妊には低用量ピル(OC)または基礎体温(BBT)を感染予防にはコンドームをとその意義をよく理解する必要があります。OCは若い女性をさまざまな月経に伴う不快や悩みから解放してくれ、また子宮内膜症・卵巣がん・子宮体がんの発生を抑えてくれます。若いうちから不妊症の予防のためにできること、妊娠に適した年齢を知ることが重要でしょう。月経痛や月経不順を放置しないことも10代の世代に啓蒙していただきたい。やせ(エネルギー不足)や睡眠不足などが男女ともホルモン異常とともに骨量低下の原因をつくります。
望む時期に妊娠するために女性主導で避妊する重要性を理解しましょう。緊急避妊薬(After Pill)は、安易にのめる薬ではありませんが望まない妊娠を避けるうえで場合によっては必要な方法であります。
 現在の日本国内の若者の間で最も多い感染症は、クラミジア・トラコマティス(一昔前にトラホームと呼ばれていた目の病気の原因菌です)による性器感染です。性交経験のある10代の約20%に感染があるともいわれています。症状が出にくい感染症ですが不妊症や子宮外妊娠のリスクやHIVの感染を受けやすくするなどけっして軽視できない感染症であります。日本はこのクラミジア感染が多いため先進国の中でもHIV感染者が増加し続けている数少ない国のひとつであります。
 その他淋病、尖圭コンジローマ(パピローマウイルス6・11型感染)、単純ヘルペスなどの患者さんにはわれわれは日常茶飯的に接しています。パピローマウイルス(HPV)の一部には悪性タイプがあり、子宮頚がんの原因です。このHPVの感染率は性交経験のある10代女性の約40%ともいわれています。90%以上の方は自然排除され問題にはならず、また必ずしも尖圭コンジローマなどの症状は出ません。そのため性経験があれば20歳ごろから子宮ガン検診を受けていただくのがよいとされています。ここ数年20歳代に子宮頚癌の患者さんが増えているのは事実です。16・18型HPVのワクチンが接種できるようになり既に多くの女性が受けられています。接種後の重い副反応についてはまだ結論が出ていませんが産婦人科医は今も接種を薦めています。また検診の重要性の啓蒙もお願いしたいと思います。きっと近い将来子宮頚癌で命を落とすことはもちろん子宮摘出をうける女性もいなくなるでしょう。
 若い人たちに幸せな恋愛を経験してほしいことはいうまでもありませんが、性のトラブルで青春の思い出が穢されることのないように願ってやみません。産むことを望んだ女性がそのライフプランにおいて出産に適した年齢でこどもを持つことに努め、出産後もいきいきと仕事を続けられる環境を準備できる世の中であってほしいものです。少なくとも育児放棄や虐待で幼い子らの命が失われることはなんとしても減らさなければと思います。児童虐待死の半分以上が0か月児である事実の意味をご理解ください。
 老年期まで健康で生きるためには、50代のからだや心の変化に負けずに過ごすことが求められます。ストレスを最小限にし、家族との関係を心地よいものに保つことや、各種検診の利用で健康の維持に努めます。30歳代から楽しく充実した自分の時間を持つ努力を開始することで50歳代以後のストレス解消に役に立つことでしょう。20代からの経済的な自立もその後の精神安定には欠かせないことでしょう。

 皆さんはいろんな状況で相談を持ち掛けられることだろうと思います。正しい知識を伝えていただきたいのはもちろん、マイナーな性の問題(GIDなど)も理解し、啓蒙していただけたらと思います。
人と人とのコミュニケーション能力を高め、メールやネットに頼らない対面でのかかわりがきっと恋愛力や打たれ強い精神力をも生み出してくれることでしょう。これは思春期にしかできないトレーニングではないでしょうか。男性の生涯未婚率は20%を超えているとも言われています。草食系どころか絶食系男子が増えているなどと問題視されています。他人とのトラブルもほとんどがコミュニケーションのまずさが原因になっています。若い人たちが思い通りのライフプランをたどられるよう願っています。

 2015年7月30日        津市 金丸産婦人科  金丸恵子
                      http://kanamaru.webmedipr.jp

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