住民健康講座

住民健康講座要旨

第209回平成27年3月12日(木)『脳卒中のリハビリテーション~歩くことを中心に~』
  • 場所津市久居公民館
    津市久居元町2354
  • 講師藤田保健衛生大学七栗サナトリウム
    リハビリテーション部 主任
    理学療法士 冨田 憲先生
  • 講演要旨 今回の住民健康講座は、脳卒中のリハビリテーションの中でも、特に歩行のリハビリテーションに着目致しました。脳卒中や脳卒中により生じる障害の概要、歩行の概要、脳卒中患者様の歩行訓練の3部構成でプレゼン致しました。
     脳卒中には、脳の血管が閉塞してしまう脳梗塞、脳の血管が破れて出血してしまう脳出血、くも膜下腔という場所に出血してしまうくも膜下出血、脳の血管が一時的に閉塞するが、24時間以内には解消される一過性虚血性発作などがあります。ダメージを受けた脳の場所にもよりますが、脳卒中になると、運動麻痺や感覚障害、言語・認知・行為・人格が障害される高次脳機能障害や、食物等を飲み込む機能が低下する嚥下障害等が、重なり合って出現します。
     歩行と身体の項では、歩行がいかに複雑な運動かについてお話ししました。赤ちゃんが成人型歩行を獲得するまでには、6年の歳月が必要です。歩行では、様々な方向に動く複数の関節(例えば、股関節や膝関節、足関節)をとても多くの筋で制御する必要があります。脳卒中患者様がこの複雑で難しい「歩行」を再獲得することは、容易ではないことがわかります。
     脳卒中患者様の機能障害(運動麻痺や感覚障害など)は改善しきるとは限らないため、機能障害と上手に付き合いながら歩行を獲得する必要があります。その際のキーワードは「運動学習」、「麻痺改善」、「筋力増強」、「装具療法」の4つです。リハビリでは最大限麻痺の改善を図りますが、ここでは麻痺が残存したケースを例に紹介しました。
     機能障害が残る中で歩行を獲得するということは、以前とは異なる新しい歩行を獲得することを意味し、新しい歩行を学習する必要があります。この学習過程は、一輪車に乗れるようになることや、スキーが滑れるようになる過程と同様です。麻痺した足を、元気だった頃のイメージで動かそうとしても上手く動きません。麻痺がありながらもどこにどう力を入れると支えられるか、どうすれば足が上がるか、そのコツを学習します。一方、麻痺側の手足を動かすにも限界があります。そこで、麻痺していない元気な身体部分も強化して、麻痺側を上手く補ってあげる方法(代償動作)を練習します。
     次の装具療法に移る前に、難易度について触れます。運動学習において、難易度の設定は非常に重要です。スキー初心者が初めから上級コースを滑ることはありません。緩やかな斜面から開始して、上達するにつれて初級、中級、上級コースへと難易度を変化させます。歩行における装具療法も同様で、装具を利用して関節の動きを制限することで難易度を調整します。つまり、足が支えやすくなったり、振り出しやすくなります。初めのうちは固定力の強い装具から開始し、上達するにつれて固定力の弱い(サポートの少ない)装具へと移行させます。この方法により、装具に頼った歩きから徐々に自身の力での歩きに移行することができます。
     脳卒中患者様の歩行のリハビリテーションをまとめていきますと、麻痺した手足の使い方を学習し、麻痺していない元気な身体部分も強化して、麻痺側を上手く補ってあげる方法(代償動作)を学習します。その際、装具は動作練習の難易度を調整してくれるので、歩行初級者から歩行上級者へと、無理なく移行させる重要なツールとなります。
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