住民健康講座

住民健康講座要旨

第232回平成29年6月8日(木)『おなかの中の時限爆弾、腹部大動脈瘤について』
  • 場所津市久居公民館
    津市久居元町2354
  • 講師三重中央医療センター
    心臓血管外科 浦田 康久先生
  • 講演要旨腹部大動脈瘤という病気は①症状がなく、気がつかない、②知らないうちに拡大する、③突然、破裂して命を取られる、という特徴があり、時限爆弾に例えられる恐ろしい病気です。そこで今日は、Ⅰ.腹部大動脈瘤とは何か?Ⅱ.どうやって見つけるのか?Ⅲ.見つかったらどうするのか?ということについてお話します。
    まずは正常を知るということで腹部大動脈を勉強しましょう。大動脈は体の中で一番太く大きな血管で、胸からお腹まで続いていますが、このうちお腹にあるものが腹部大動脈です。この血管の直径は約2cmあり、中には大量の血液が勢いよく流れています。そして、腹部大動脈瘤とは、この大事な血管が膨らんだものです。特に、たばこを吸う人、血圧が高い人、高齢の人、男性、遺伝がある人がなりやすいことが分かっています。
    それから、腹部動脈瘤は膨らんだ状態でずっと留まるものではなく、だんだん拡大していきますし、ある程度拡大すると破裂する可能性が高くなります。そして、もし破裂したら命を取られてしまう危険が非常に高いことが知られています。以上から腹部大動脈瘤とは、お腹にある大動脈が膨らんだもので、だんだん拡大して最後には破裂して命を奪っていく恐ろしい病気であることが分かります。
    この恐ろしい病気ですが、以下の理由で見つけるのが難しいことが分かっています。まず、大動脈は体の深い場所にあり、表面には見えないし触ることもできないということです。それから、動脈瘤があるだけでは症状がないので、自分でも気が付きにくいことが挙げられます。最後に血液検査やレントゲン検査などでは異常が見つからないことも多く、発見を難しくしています。実際には腹部超音波検査やCT検査で見つけるしかありません。
    では腹部大動脈瘤が見つかったら、どうすればいいのでしょうか。まずは破裂を防ぐために高血圧を治療することと、禁煙は欠かせません。そして治療が必要になれば2つの治療があります。まずは手術でお腹を開けて動脈瘤になった血管を取り除き、その代替えとして人工の血管を縫い付けて血管を元通りにする方法で、いわゆる“お腹を切って治す”治療です。もう一つは足の付け根から大動脈瘤の内側にステントグラフトという筒を挿入して動脈瘤へのストレスを減らして破裂を防ぐ方法で、“足の付け根から治す”治療です。これまで3つの治療の方法を提示しましたが、実際にはどういう方針になるかを見てみますと、まずは腹部大動脈瘤と診断された方は全員禁煙してもらい、高血圧の治療を行います。その中で動脈瘤の大きさが4cmに満たない小さな動脈瘤の人は、そのまま様子を見ることになります。大きさが4cmを超えてしまった人については治療が必要ですから、お腹を切って治す方法か?足の付け根から治す方法のどちらかを受けてもらうことになります。すなわち動脈瘤の大きさによって治療方針が分かれるということです。もし手術が必要になった場合には2つの治療法がありますが、お腹を切って治す治療は、昔から方法です。一方、足の付け根から治す治療はここ10年ぐらいで日本では普及してきた治療であり、それぞれ特色があります。体への負担の大きさや治療成績に若干の差はありますが、どちらの治療も動脈瘤を治すことにはついては変わりません。実際には患者さんの全身状態や持病、血管の形によって治療法が決まります。よくどっちの治療がいいの?と聞かれますが、どちらもいい治療ですと答えています。
    これまで腹部大動脈瘤について話してきましたので、この病気について少しは分かっていただけたかと思います。すなわち、腹部大動脈瘤は恐ろしい病気ではありますが、早く見つけることで治療が可能な上、治療成績も安定してきているということです。しかし、まだ課題はあります。それは破裂してしまってからの治療についてはまだ満足いくような成績ではないということです。これを何とかしようと今まで色々と努力がなされてきましたが、それも実を結んでいませんので、やはり破裂する前に見つけて治療をするのが、現実的な対応だと思います。
    今日ここで提案したいのは、気になる人はかかりつけの先生に相談して、検査をしてもらうことです。まったく症状がなくても一度見ておくと、動脈瘤があるかないかが分かりますし、もし見つかればきちんと対応し、治る可能性も高くなります。そして実際に動脈瘤を持っている人には、今はいい治療があって治る可能性が高くなっていますので、ぜひ頑張って治療を受けてもらいたいと思います。
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