住民健康講座

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令和5年9月14日(木)第268回『見えにくいのは年のせい?白内障と眼内レンズのお話』

場所津市久居アルスプラザ
津市久居東鷹跡町246
講師福喜多眼科 
院長 福喜多 寛先生
講演要旨年齢が進むと共に眼の見えづらさが起きる病気は様々です。

40歳以上では緑内障の方が増えてきます。最近では40歳になったら緑内障の早期発見のために眼底検査を受けましょう、という動きがあるくらい、早く見つけることが大切な病気です。
50歳以上では加齢黄斑変性症、70歳以上では白内障の方が増えていきます。
なんと、80歳以上ではほぼ100%の方が白内障になってしまいます。

白内障とは眼の中の水晶体という透明なレンズが、濁っている状態の事を指します。
白内障の程度が軽いうち、つまり水晶体の濁りが薄いうちは、見え方はほとんど変わりません。
眼科を受診して、白内障ですね、と言われた方もいらっしゃるかもしれませんが、軽い白内障ではほとんどの方が、見え方の変化に気が付かないことが多いです。

では、白内障が進むとどのようになるのでしょうか?
はじめに出てきやすい症状が、明るいところでまぶしく感じられる、暗いところで見えづらく感じられることです。さらに白内障が進むとかすんで物が見えにくくなるということが起きます。
それから、視力検査で眼鏡を掛けても数字が段々出なくなっていきます。
ますます白内障が進んで、水晶体が茶色くなる頃には、見えなくなりました、と言われて来院される方もいらっしゃいます。

では、白内障の治療とはどのようにするのでしょうか? 白内障、目薬で治ったらいいですよね。
でも、一度濁った水晶体は薬で元通り透明になることはありません。

現在の標準的な治療法は、濁った水晶体を手術で取り除き、その代わりに眼内レンズを入れる方法になります。
手術というと怖いと思われる方もいらっしゃるかも知れません。
しかし、白内障手術の数は、令和元年の時点で年間165万件以上となっています。毎年多くの方が手術を受けられている事がわかりますね。

また、濁った水晶体を取り除き、眼内レンズを入れるという方法は、1980年代より40年以上の歴史がある手術の方式です。手術の基本的な考え方は変わりませんが、時代とともに、より安全に手術を受けて頂けるように様々な工夫が行われています。

現代では一般的になった眼内レンズですが、レンズの種類は主に大きく分けて2種類があります。
一つは、単焦点眼内レンズです。焦点とはピントのことで、ピントが合う距離がひとつのレンズを単焦点レンズといいます。
単焦点レンズのよい点は、ピントが合う距離のものが、とてもクリアにみえる事です。
ピントが合う距離以外は眼鏡がないとぼやけるので、眼鏡を掛けてピントを調節します。
例えば、遠くに合わせた眼内レンズを入れると、手元は老眼鏡が必要です。

もう一つは多焦点レンズです。
多焦点レンズのよい点はピントが合う箇所が多く、眼鏡が要らなくなることが多いということです。
最近では遠く、中間、近くの3か所にピントが合う、3焦点レンズがよく使用されます。
デメリットとしては、一般的にハロー、グレアという街灯などの光の周りに輪ができたり、にじんだりする現象がおきます。最近のレンズでは改良が進み、少なくなってきていると言われています。

ここまでで、単焦点、多焦点のレンズを紹介しました。眼鏡が要らなくて手元も遠くも見えるのなら、多焦点が良さそうです。
しかし、元々角膜、網膜、視神経などの疾患がある方で、またその程度が良くない方は、単焦点レンズのほうが見え方に問題が出にくく、そちらが勧められます。

白内障が進み、手術を受けられる際は主治医とよく相談した上でレンズの決定をしましょう。きっと、あなたの主治医はベストな見え方を提案して下さると思います。

最後に、お伝えしたい事ですが、見えにくさを感じて困られている方は、迷わずお近くの眼科を一度受診してみて下さい。
白内障の他にも、早く治療しなければならない思わぬ病気が隠れている場合があります。

何か原因がわからない状態というのは不安なものです。
まずは見えにくい原因を調べ、必要があれば治療を受け、不安を解消して頂く事が大切だと思います。