住民健康講座

過去の住⺠健康講座要旨

令和8年6月11日(木)第296回『やさしい肺がん』

場所津市久居アルスプラザ アートスペース
津市久居東鷹跡町246
※満席の場合、ご入場をお断りいたしますので、予めご了承ください。
講師三重中央医療センター
呼吸器内科 部長 内藤雅大先生
講演要旨~はじめに~
二人に一人が、がんになる時代となりました。以前と比べて治療薬や治療法が進歩していますが、まだ確立された治療がないものや、進行度により完治が難しいものがあります。
国立がん研究センターの統計によりますと、肺がんは国内がん死亡数1位(2022年)・罹患数2位(2019年)となっており、今後もその診療の重要度は高まっていくでしょう。

~がんゲノム医療とは~
ゲノムとは、遺伝子をはじめとする遺伝情報を意味します。そして、がんゲノム医療とは、ある特定の遺伝子異常により発症したがんに対して、それぞれに適切な薬剤投与を行う医療のことです。

~肺がんの治療~
肺がんの治療は外科治療・放射線療法・薬物療法があります。外科治療は肺がんを手術で切除する方法で、放射線療法は放射線の細胞損傷作用を利用してがん細胞を死滅させる治療法です。
当科の担当は薬物療法です。その発展は著しく、現在は抗がん剤(細胞障害性抗がん薬)・分子標的治療薬・免疫チェックポイント阻害薬に分けられ三本柱となりました。残念ながら薬物療法のみで進行肺がんを完治させることはできませんが、がんを縮小させたり、その進行を抑えたりする効果が期待されます。

~がん遺伝子異常を調べるには~
がんの組織を採取し、がん遺伝子検査を実施することが必要です。
肺がんにおいては、手術で摘出した組織や、手術をしない患者さんの場合は、肺のカメラ(気管支鏡)・体の外から針を刺す検査(CTガイド下肺生検)により組織を採取させていただきます。

~分子標的治療薬とは~
がん細胞は遺伝子に傷がつく(変異する)ことで発生・増殖します。分子標的治療薬は、特定の遺伝子異常に対して作用し、がん細胞を破壊したり、増殖を抑えたりする効果があります。がん細胞を狙い撃ちするため、正常な細胞へのダメージが軽くなり、副作用が少ないことが特徴で、患者さんの負担軽減につながるようになりました。
肺がんでは現時点で8つの遺伝子異常に対する分子標的治療薬が承認されています。

~がん遺伝子パネル検査とは~
がん遺伝子パネル検査とは、がんに関わる複数の遺伝子異常を一度に調べることができる検査法です。
その内容は、肺がんの診断時に行うものと、固形がんの標準治療が終了あるいは終了見込みになった時点で行うものがあります。前者は、肺がんで承認された分子標的治療薬の選択のためのもので、当院で実施できます。一方、後者の主な目的は、確認された遺伝子異常をもとに参加できる可能性のある臨床試験・治験の有無を調べることであり、実施する際は三重大学医学部附属病院ゲノム診療科へご紹介させていただきます。
近年、肺がんに特化した検査法が登場しており、当院でも診断時に遺伝子異常をチェックすることができるようになりました。肺がん全体の約4割が、8つの遺伝子異常のいずれかに当てはまるとされているため、その確認は大切です。
当科では、肺がんと診断した時点で8つの遺伝子異常を調べ、いずれかの遺伝子異常を認めた場合は、それに対する承認された分子標的治療薬にて迅速に治療を開始いたします。飲み薬が多いため、たくさんの患者さんが外来で治療を続けています。

~さいごに~
肺がんの治療には、現場から得た経験とエビデンス(科学的な根拠)が重要です。当科では経験とエビデンスのどちらかに偏ることなく、まず「患者さんをみる」ことを心がけ、一人一人に応じたベストな診療をさせていただきます。
肺がん患者さんの診療に貢献できますように、一層の努力をしてまいりたいと思います。どうかよろしくお願い申し上げます。