住民健康講座

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平成28年9月8日(木)第224回『自宅で最期を迎えるために』

場所津市サンデルタ香良洲 津市香良洲町2167
講師刀根クリニック 院長 刀根幸夫 先生
講演要旨 高齢化社会と言われて久しく、2025年問題に向け、多死社会を迎えようとしている日本。年間100万人以上の人が亡くなる中、生涯で2人に1人ががんを患い、3人に1人ががんで亡くなっています。近年、女性では特に子宮がん、乳がんの羅患率が上昇しています。
 がん治療における緩和ケアですが、以前は抗がん剤や放射線治療などが効かなくなってきてから行うものとされておりましたが、現在はがんと診断されたときからがんの治療と平行して行っていくものと定義されています。麻薬と聞くとイメージはよくないかもしれませんが、医療用麻薬は緩和ケアで鎮痛薬として使う際には中毒性は少ないとされており、もっともっと活用していくことが重要です。
 人生を全うする場所として、昭和50年ごろまでは自宅で亡くなることが多かったのですが、現在は8割がたが病院で亡くなる時代です。余命を自宅で過ごしたいと思いながらそれが叶わない、いわゆる看取り難民と言われる方たちが多く存在します。家族の負担が大きくなることや在宅で看取る事への不安、それをサポートする医師不足などの原因で在宅医療という選択肢が遠のいているのかもしれません。しかし、個人の尊厳死を見直す観点から、在宅で看取りたいと願う人々が多く存在するのもまた事実です。
 医師は、がんの終末期に、残された時間をどこでどのように過ごしたいか、どのように死を迎えたいのかを本人及び家族とともに話し合い、看取りへの不安を取り除き、その上で在宅医療、在宅看取りをきめ細やかに進めていく必要があります。一方、本人および家族は、死をどのように迎えるのかについて日ごろから話し合い、時にはエンディングノートなどを活用するなどして今一度看取りの在り方を見つめなおすことが大切です。