住民健康講座

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平成29年7月13日(木)第233回『震災で生き残ったのに、避難所生活で命を落とさないために(歯科の立場から)』

場所津市久居公民館
津市久居元町2354
講師津歯科医師会地域医療委員 宮崎歯科医院(片田)
院長 宮_弘隆先生
講演要旨南海トラフを震源とする大震災が、間近に迫っていると言われて久しい。
当然、震災そのものから生き延びることが、一番大切である。しかし、その後の避難生活でたくさん死者が出ることは、あまり認識されていない。
過去の大震災を調べてみると、阪神淡路大震災では直接死(圧死、窒息死、焼死など)5483人に対し、関連死(避難生活での震災によるストレスや、生活環境の悪化による死亡)が919人(全死者の14.4%)に上る(兵庫県だけの死者)。
東日本大震災では直接死(溺死、圧死、損傷死、焼死など)+行方不明者が18449人に上るのに対し、関連死が3472人(全死者+行方不明者の15.8%)である。
さらに、熊本地震では直接死(圧死、窒息死など)が50人に対し、関連死は地震発生後約1年間で、直接死の3倍以上の170人にも上る。
又、震災関連死の死亡原因を調べてみると、阪神淡路大震災と東日本大震災では、肺炎が第1位になっており、また熊本地震でも肺炎が第2位に挙げられている。
そして肺炎の中でも、誤嚥性肺炎が一番多い割合を占めている(65歳以上では肺炎の70%が誤嚥性肺炎)。
震災関連死の年齢を見てみると、震災関連死の80%以上がいずれの震災においても、65歳以上の高齢者となっている。
以上の結果から、震災関連死を無視しての災害対策は片手落ちであり、肺炎(特に誤嚥性肺炎)の予防を、65歳以上の高齢者に施すことが大切と考えられる。
肺炎(特に誤嚥性肺炎)を防ぐためには、近年の研究により、「口腔ケア」(歯磨き、入れ歯の清掃、口腔周囲筋の運動訓練、嚥下促進訓練など)がかなり有効であることが分かってきた(「口腔ケア」により肺炎のリスクを、40%軽減できると推計されている)。
そのため津歯科医師会では、震災に備えて歯ブラシを各歯科医院あたり130本備蓄しており、洗口液、液体歯磨きなども備蓄している。又、避難所にすぐ配布できるような、「口腔ケア」を啓発するチラシも用意している。
そして何よりも大切なことは、住民の一人ひとりが、震災時の避難生活でおろそかになりがちな、歯磨きをはじめとする「口腔ケア」の大切さを認識していただくことである。