住民健康講座

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平成29年10月12日(木)第235回『認知症とは?~知って予防し、愛される老人になりたい~』

場所津市久居総合福祉会館
津市久居東鷹跡町20-2
講師榊原病院
副院長 村田昌彦先生
講演要旨 高齢化するにあたり、まず認知症を予防するためにも認知症について理解を深めることが大切です。認知症の約三分の一はアルツハイマー病といわれています。アルツハイマー病には意識障害はなく、ゆっくりと進行していきます。まず最近の記憶が障害され、判断が障害され(認知機能の障害)、徐々に昔の記憶も障害されていきます。場所の記憶が失われやすく、置忘れなどから「物盗られ」妄想が生じることがあります。物忘れが気付かれるときにはすでにアルツハイマー病の原因となるβアミロイドタンパクが蓄積しているため、予防するには物忘れを自覚する前、今現在から始める必要性があります。
 認知症として次に多いのは、血管性認知症です。血管性認知症はその名の通り、脳梗塞や脳出血によって脳神経が障害されて生じるものです。血管による障害のため、血管が弱っていると生じやすくなるので、高血圧や糖尿病などの生活習慣病を持っている人は体の管理をしっかりする必要があります。血管性認知症は、脳梗塞など障害の部位によって症状が異なります。例えば前頭葉の障害であれば意欲が低下したり、側頭葉であれば記憶や言葉の障害が生じることがあります。脳梗塞は繰り返し生じることがあり、階段状に状態が悪化する特徴があります。また、できることとできないことがまだらに生じることも特徴的です。
 レビー正体病は小刻み歩行などから生じることがあり、幻視体験を伴うことが特徴的とされています。発生率は低いものの性格の変化が特徴的で、社会ルールを逸脱した行動をとることも特徴的とされる前頭側頭型認知症も存在します。
 予防には前述した生活習慣病のコントロールのほか、毎日の食事内容に気を付けることが大切です。赤ワインや地中海料理がよいといわれていますが、私たちの食事としては野菜を中心としつつ、タンパク質などもバランスよく摂取することが長続きして認知症の予防に役立つものと思われます。
 また、適切な運動も重要です。「老いは足から」と言われていたのは単なる言い伝えだけでなく、認知症予防に重要な意味があります。激しい運動は不要ですが、軽い運動をしながら簡単な脳トレをすると、特に有効とされています。自宅に引きこもると刺激が少なくなるので、適切な脳への刺激が大切です。仲間との語らいやサロンなどがよいといわれるのも、適切な刺激があるためと言えるでしょう。「地域で自分らしく生きる」ことが厚生労働省が提唱していますが、自分らしく地域で、家庭で生活し続けることができるよう、今から(今でしょ!)予防に気配りしてみましょう。自立した老人になりたい、それが副題の~知って予防し、愛される老人になりたい~の意図するところでした。
 さいごに、それでも認知症になりかかったときの治療についてもお話しいたしました。今現在は認知症に対する根本的な治療法はありませんが、薬物により認知症の進行を遅らせることができるようになってきています。物盗られ妄想で大変な思いをされている場合、緩和する方法もあります。困ったことがあれば家族だけで抱えて悩むのではなく、遠慮なく専門的な医療機関に相談されることをお勧めします。