住民健康講座

過去の住⺠健康講座要旨

平成30年7月12日(木)第243回『歯とお口の健康管理』

場所津市久居総合福祉会館
津市久居東鷹跡町20-2
講師勝田歯科医院
院長 勝田宗宏先生
講演要旨これまで、医科と歯科の関連性についてあまり触れられておらず、その結果、虫歯や歯周病になっても長期間放置されがちになってしまうことが非常に多かった。歯に強い痛みが出たり、歯茎が腫れたりして、うまく物を噛(か)むことができなくなる摂食障害が起きるまで歯科医院に通院しないことが原因で、治療が遅れて歯を失ったり、虫歯の進行からくる歯根周囲の病気や進行した歯周病による慢性炎症を長期にわたり持ち続ける方が現在も少なくはないと感じて止まない。
口の中の環境が悪くなると、身体へも感染症を起こしやすくなる。特に要介護の高齢者における誤嚥性肺炎がよく知られている。
口の中のお手入れが悪く、歯周病などの感染症の原因菌が歯の周囲組織の毛細血管に大量に入り血流に乗ることで菌(きん)血症(けっしょう)となる。心臓弁膜症の患者さんでは、感染性心内(しんない)膜症(まくしょう)を引き起こす原因となる。
歯周病原因菌の刺激により、動脈硬化を誘導する物質が出て、血管内にプラーク(コレステロールなどの脂肪からなる粥状(じゅくじょう)のもの)を形成しやすくすることも解明されてきました。
虫歯(齲蝕(うしょく))の有病率は、成人で9割、65歳以上で近年増加傾向にある。この理由として、虫歯の初期には殆ど痛みなどの症状がない為に放置されやすい傾向があるのと、高齢化による要介護者のお口の自己管理が出来難い為と思われます。
歯槽(しそう)膿漏(のうろう)(歯(し)周病(しゅうびょう))による炎症が進行すると、特に糖尿病の患者さんにおいての血糖値のコントロールを定まりにくくし、相互的に悪影響をもたらすため、歯周病は糖尿病の合併症のひとつともいわれるようになった。
口腔がんは、他の全身にできる癌(がん)と比較すると視診や触診で比較的容易に見つけることができるのにも関わらず、半数以上は進行癌として発見される為に5年生存率が50~60%と低い。我が国、日本においての(減少傾向にある)現在の死亡率が35%程度に対して、アメリカでは20%程度である理由として検診による早期発見が大きく影響していると考えられる。ところが、日本においての口腔がん検診が殆ど実施されていない現状であることから、今後の定期的な歯科検診が重要であると言える。
歯とお口の管理は、おおかた自分自身で出来るので、各家庭での取り組みが大事になる。また、定期的にかかりつけの歯科医院に赴き、検診と歯磨き指導、そして予防処置(PMTC:専門的な機械的歯面とその周囲の清掃)とフッ素塗布を受けることが大切である。
寿命の高齢化に伴い、歯の役割としての使命も更に長くなってきている。従って、これまで以上にしっかりとした口腔ケアが必要不可欠になってきていると考えます。