住民健康講座

過去の住⺠健康講座要旨

令和1年7月11日(木)第253回『お口の健康Q&A』

場所津市久居公民館
津市久居元町2354
講師津歯科医師会 地域医療担当理事/
なかせ歯科 院長 中瀬 実先生
講演要旨むし歯について:① むし歯予防のためには、歯磨きだけでなく、間食による砂糖の摂取量を減らすことも必要、また、おやつの回数が多い方はさらに要注意。② 8020達成者(80歳で20本以上歯がある)は、2016年には50%を超えており、近年、高齢者の歯の本数は増える傾向にある。その結果、歯周病の進行と併せて、根面う蝕が多発しやすい。③ むし歯になりやすいのは、歯の形、歯並び等の遺伝的要因もあるが、食習慣、口腔清掃習慣および乳幼児期での周囲の大人からのむし歯菌の感染などの環境要因が及ぼす影響が大きい。④ むし歯菌(酸)に対して歯質を強化する最も効果的な方法は、フッ化物の応用(歯磨剤、洗口剤および歯面塗布)である。
歯周病について:① 歯周病は、決して加齢現象ではない。しかし、加齢に伴う食習慣の変化、口腔乾燥、免疫力低下、口腔清掃不良が進むと、歯周病は進行しやすくなる。② 重度の歯周病があると、歯ぐきから歯周病菌が全身の血管へ侵入し、動脈硬化の原因となり、心疾患、脳血管疾患の発症リスクを高める。また、歯周病は、糖尿病、骨粗鬆症などの全身の病気とも関連があることが分かってきている。③ 歯肉退縮(歯ぐきが下がった状態)の主な原因は、歯周病であるが、過度なブラッシング、歯ぎしり、食いしばり、歯並びが要因となることもある。④ 歯周病で喪失した歯ぐきや骨が元通りに回復することは難しいが、適切な治療、セルフケア(ブラッシング)、メンテナンス(定期検診)を行えば、進行を止めることもできる。また、最近では歯周組織再生療法も行われている。
義歯について:① 就寝中、義歯はなるべく外して、保湿できる容器に保管する。また、災害に備えて、枕元に置いておく。② 入れ歯安定剤を状況に応じて、短期間あるいは補助的に使ってもよいが、クリームタイプまたはパウダータイプを選ぶ。③ 水洗とブラシ清掃では落とせない汚れもあるので、少なくとも週1~2回は義歯洗浄剤で洗浄する。
口腔がんについて:① 1年間の罹患数は、約8,000人(全がんの1~2%)で、罹患率は、10万人当たり約6人である。② 舌がんの5年生存率は、Ⅰ期(早期)で94.7%、Ⅳ期(進行期)で49.3%、全体では71.8%。③ 危険因子として、タバコ、アルコール(度数が高い、飲酒して顔が赤くなる人)、機械的刺激(合わない義歯、欠けてとがった歯)が挙げられる。④ セルフチェックの項目、口内炎が2週間以上治らない、白っぽいできものがある、硬いしこりを触れる、赤くただれている、抜歯した傷が治らない、入れ歯による傷が治らない。
お口のケア(お手入れ)について:① 舌の掃除は、ほとんど必要ないが、もし行うなら専用のクリーナーで優しく清掃する。過度に行うと、舌の粘膜が傷ついて、痛み、味覚障害、口臭が生じることもある。② お口の中の細菌は就寝中に増えるので、就寝前と朝食後に歯磨きすると効果的である。③ 電動(音波)歯ブラシは、手がうまく動かせない人や磨く力が強すぎる人には特にお勧めで、使用に際しては、歯科医院で指導を受け、専用の歯磨剤(研磨剤・発泡剤無配合)を用いる。④ いわゆる“デンタルリンス”は、「洗口液」と「液体歯磨」の2種類があり、液体歯磨は必ずブラッシングが必要。洗口液には、歯面へのプラーク付着を抑制する効果があるが、プラークの奥底まで浸透し、殺菌するまでは期待できない。洗口液を使っても、通常のブラッシングを怠ってはいけない。⑤ 食後30分以内のブラッシングを否定する意見があるが、これは酸性度の強い食品を摂取してすぐに歯磨きをすると、歯が傷ついて「酸蝕症」を引き起こすという意味であった。一般的な食事では、このような酸蝕症は生じにくいので、むし歯予防のためには早めに歯磨きすることが大切である。