住民健康講座

住民健康講座要旨

第245回平成30年10月11日(木)『統合失調症に気づき、治療するために』
  • 場所津市久居総合福祉会館
    津市久居東鷹跡町20-2
  • 講師久居病院
    医師 棚橋 俊介先生
  • 講演要旨「統合失調症」は、こころの病気の一つであるが、まだまだ認知されておらず、誤ったイメージを持たれることも多い。しかし、生涯のうちに統合失調症にかかるのは人口の約100人に1人と稀な病気ではなく、発症後もこころの働きの多くの部分は保たれ、多くの患者さんが回復し社会参加している。また、思春期から青年期に発症しやすいため、個人にも社会にも大きな損失となるが、他の病気と同じように、早期発見や早期治療が、その後の社会生活を維持するために有効であると考えられている。早期発見や早期治療を行うためには、病気になったご本人やその周囲の方々の理解や協力が大切である。
    統合失調症は、こころを司る「脳」の病気と考えられている。私たちは、様々な情報に刺激を受け、いろいろな考えや感情を頭の中に浮かべ、それに基づいて行動している。通常脳は、それらを1つの方向にうまくまとめる「統合」という働きをしている。その脳の働きが調子を崩した「失調」という状態が、「統合失調症」である。この「統合失調」の状態になると、脳が病的な活動を起こし、幻覚や妄想、まとまりのない思考・行動が生じる(陽性症状)。さらには、脳の健康的な機能が低下することで、意欲や関心が低下する(陰性症状)。また、状況を把握しその対応を行う力や記憶・注意などの力が低下して、社会生活に影響を与えることもある(認知機能障害)。これらの症状が明らかになる前には、神経過敏や気分の落ち込みなどを認めることがある(前触れ)。
    統合失調症を疑った時には、精神科や神経科を掲げる病院やクリニックを受診することが必要である。この際問題になるのは、自分自身が病気であると理解できる「病識」が無くなるという症状が、この病気には生じる場合があることである。調子の悪さや神経過敏は自覚できても、幻覚や妄想のような症状が病気によると自分で気づくことができなくなり受診を拒むことがある。このような場合、家族はとまどうかもしれないが、やはり家族は病気と認めて受診行動を促すことが大切である。本人に対しては優しく粘り強く説得する必要があり、病気と認められなくても、病気のために起きている現実的な問題、例えば、不眠、友達関係や勉強、仕事に対する疲労感や抑うつ気分を理由にすることなどが有効な場合もある。受診が難しい場合は、病院や保健所、こころの健康センターなどに相談し個別に対応を考えてもらうことができる。精神科に偏見を持ち恐れる方もいるが、診察室の様子は他科とかわらず、他科と同じように医師に自分の症状を伝えて、治療の必要性を判断してもらう。また、受診しても絶対に入院になるわけではないことも付け加えておく。
    治療は、まず「薬物療法」が必須である。抗精神病薬を主に使用し、他に抗不安薬、睡眠薬、気分安定薬(情動安定化薬)などを使用することがある。これらの薬は脳の働きの源となる神経伝達機能のバランスを整えることで症状を改善する。また、「心理社会的治療」という治療も同様に必須で、本人の不安を聞き取り支えながら、生活訓練や就労訓練などの社会復帰に向けたリハビリを行う。これには障害手帳や年金などの福祉サービスも含まれる。特に調子が悪い時には、不安や恐怖心が強いものであるが、そのような気持に寄り添い、十分に休養を取って頂くことが重要である。また陰性症状や認知機能障害を認めても焦らずに、出来ることからコツコツと初められるように支援することが大切である。
    今後、本人や家族が安心して病気と気づけるためには、さらなる医療の発展、病気になっても回復を待つことのできる社会制度の拡充、病気を抱えた本人や家族に対する周囲の理解を育むことが必要である。最近では本人や家族達が、病気について書籍やインターネットなどで発信する機会も増えており、そういった活動に注目して頂くのも良いと考える。何より病気や理解しにくい症状について受け止めようという姿勢が大切であり、これを機会にこの病気について関心を持って頂ければ幸いである。
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